STEP5.夕日
「…はぁ、やっと終わった…」
悠希はため息をついた。
本当は日が落ちない内に家に帰ろうと考えていたのに、琉唯の校舎案内をしていたらいつの間にか廊下は夕日によって赤く照らされていた。
「これで全部?」
「あ、うん。多分全部の教室に行って、全部の部活見て回ったよ。」
そう、本当はただ校舎を歩くだけの予定だったはずが好奇心旺盛な琉唯に振り回され、教室だけでなく部活まで見て回ったのだ。
「うーん、これ!っていった部活はなかったな。」
「…ほんとに?琉唯ちゃん、すごい動けてたよ?」
悠希は運動部の体験をしている琉唯を思い返す。
「あ、運動は得意なんだ。」
「あ、そ、そうなんだ。」
つくづく私とは真反対の性格だな、と悠希は思う。
琉唯は好奇心旺盛、マイペースでポジティブ。オマケに運動もできるときた。
それに比べて悠希は控えめで怖がり。挑戦もなかなかしたがらないタイプだ。
もちろん、運動もできないしやらない。
「…ねぇ、悠希。悠希はなんの部活に入ってるの?」
「えっ?私は…なんにも入ってない…。強いていえば…図書委員…?」
悠希は部活をしていない。
その代わりに図書委員として毎日図書室にいる。
「図書委員…。私には向いてないな。」
うんうん、と1人で納得した琉唯。
「…よしっ!悠希、今日はありがと。明日からもよろしく。じゃぁね。」
そして1人で教室からバタバタと出ていく。
「…えっ?ば、ばいばい。」
ぽかんとした顔で悠希は手を振る。
明日からの生活は今まで想像したこともないものになるんじゃないかな、と期待を寄せながら悠希はいつもの通学路を通って家に帰った。
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